2010年 10月 01日
朝日新聞にとりあげられました
ご当地検定、曲がり角 受検者減り採算悪化、各地で中止(1/2ページ)
朝日新聞夕刊2010年10月9日10時2分
全国でブームとなった「ご当地検定」が曲がり角を迎えている。地方の活性化策として2005年前後から各地に誕生したが、受検者の減少による採算悪化から、中止に追い込まれる検定が相次いでいる。せっかく合格した人が知識を生かす機会がないなど、一時的な客寄せだけに終わってしまうケースも少なくないようだ。
沖縄の文化や歴史をテーマにした「沖縄大好き検定」は今秋に予定していた試験の中止を決めた。地元の大学関係者らが08年に始め、年1回実施。初回は1035人が受検したが、昨年は514人に半減していた。
公式ガイドブックも出版し、1~3級の各合格者には認定証を発行。観光の振興や、地元の人が郷土を理解するために役立てたいという趣旨だった。だが、合格者が公的な観光ガイドとして働けるような仕組みもなく、受検する意義を打ち出せなかった。
東京や大阪にも受検会場を設けるため、事業費は1回につき500万円程度は必要。行政の助成もなく、3年目で行き詰まった。
ユニークさで注目を集めた検定も状況は厳しい。松葉ガニで有名な兵庫県香美町の「香住!カニ検定」も今年、姿を消した。地元観光協会などが主催。試験後に受検者全員が参加できるカニ食べ放題も話題になったが、07年から実施3回で受検者は半減。担当者は「町外へのカニの宣伝効果はあったと思うが、それ以上の展開はできなかった」。
筆記試験を通過すると、黒豆の収穫体験などができる兵庫県篠山市の「黒まめ検定」は今年の試験実施を見送った。成績上位者は「黒まめ博士」とされるが、それ以上のメリットはない。「このまま続けても受検者数はじり貧。今年の実施はやめて、内容を見直す時間が欲しかった」と担当者はいう。
■地元観光業界が頼り
財団法人「地域活性化センター」(東京)によると、04年に誕生した「京都・観光文化検定試験」がブームの火付け役。08年の調査では、全国で約240件の検定があった。さらに300件ほどに増えたとみられる。実施主体は地元の商工会議所や自治体が半分以上を占める。
受検者減少は各地で共通の悩みだ。全国最大級の京都検定でも、受検者は当初の1万人強から半減した。同センターの石橋義浩・コンサルタント業務課長は「受検者の大半は地元の人。観光地として全国区の京都でさえ、頭打ちになるのは当然」と指摘する。
どの検定も、受検者減少を食い止めるためにまず頼るのは地元観光業界だ。「金沢検定」の場合、地元ホテルやタクシー業界などに、ビジネス検定としての利用を呼びかける。
石橋課長は「合格者の活用方法が一番の課題。公的ガイドへの登用などが求められる。検定を受検する目的を明確にするのが重要ではないか」。
03年、全国の先駆けとして始まった「東京シティガイド検定」(東京観光財団)。合格者有志がNPO法人をつくり、ボランティアで都内観光のガイドを務める。
こうした動きとは別に、参加する楽しみに目的を絞った検定もある。年2回開催される神奈川県小田原市の「小田原まちあるき検定」は、毎回50人程度が受検。朝から町を歩いて、昼に名物を食べ、午前中に学んだことを簡単に試験して、おみやげを持って帰る。合否はない。
◇
ご当地検定に限らず、地域活性化のアイデアには各地が悩み続けている。つい飛びついてしまうブームの移り変わりは激しい。
検定の次は「ご当地ヒーロー」。その後、滋賀県彦根市のキャラクター「ひこにゃん」などの「ゆるキャラ」が乱立した。今は「B級グルメ」がブームのまっただ中。07年に始まった「東京マラソン」の成功にあやかり、市民マラソン大会も各地で盛んだ。民間シンクタンクのブランド総合研究所(東京)の田中章雄社長は「単にブームにのるだけでは、失敗が目に見えている。ご当地検定などで地域をアピールすることを、地元のどの産業の活性化に、どう結びつけるか、という明確なシナリオが求められる」と語る。(湯地正裕)
朝日新聞夕刊2010年10月9日10時2分
全国でブームとなった「ご当地検定」が曲がり角を迎えている。地方の活性化策として2005年前後から各地に誕生したが、受検者の減少による採算悪化から、中止に追い込まれる検定が相次いでいる。せっかく合格した人が知識を生かす機会がないなど、一時的な客寄せだけに終わってしまうケースも少なくないようだ。
沖縄の文化や歴史をテーマにした「沖縄大好き検定」は今秋に予定していた試験の中止を決めた。地元の大学関係者らが08年に始め、年1回実施。初回は1035人が受検したが、昨年は514人に半減していた。
公式ガイドブックも出版し、1~3級の各合格者には認定証を発行。観光の振興や、地元の人が郷土を理解するために役立てたいという趣旨だった。だが、合格者が公的な観光ガイドとして働けるような仕組みもなく、受検する意義を打ち出せなかった。
東京や大阪にも受検会場を設けるため、事業費は1回につき500万円程度は必要。行政の助成もなく、3年目で行き詰まった。
ユニークさで注目を集めた検定も状況は厳しい。松葉ガニで有名な兵庫県香美町の「香住!カニ検定」も今年、姿を消した。地元観光協会などが主催。試験後に受検者全員が参加できるカニ食べ放題も話題になったが、07年から実施3回で受検者は半減。担当者は「町外へのカニの宣伝効果はあったと思うが、それ以上の展開はできなかった」。
筆記試験を通過すると、黒豆の収穫体験などができる兵庫県篠山市の「黒まめ検定」は今年の試験実施を見送った。成績上位者は「黒まめ博士」とされるが、それ以上のメリットはない。「このまま続けても受検者数はじり貧。今年の実施はやめて、内容を見直す時間が欲しかった」と担当者はいう。
■地元観光業界が頼り
財団法人「地域活性化センター」(東京)によると、04年に誕生した「京都・観光文化検定試験」がブームの火付け役。08年の調査では、全国で約240件の検定があった。さらに300件ほどに増えたとみられる。実施主体は地元の商工会議所や自治体が半分以上を占める。
受検者減少は各地で共通の悩みだ。全国最大級の京都検定でも、受検者は当初の1万人強から半減した。同センターの石橋義浩・コンサルタント業務課長は「受検者の大半は地元の人。観光地として全国区の京都でさえ、頭打ちになるのは当然」と指摘する。
どの検定も、受検者減少を食い止めるためにまず頼るのは地元観光業界だ。「金沢検定」の場合、地元ホテルやタクシー業界などに、ビジネス検定としての利用を呼びかける。
石橋課長は「合格者の活用方法が一番の課題。公的ガイドへの登用などが求められる。検定を受検する目的を明確にするのが重要ではないか」。
03年、全国の先駆けとして始まった「東京シティガイド検定」(東京観光財団)。合格者有志がNPO法人をつくり、ボランティアで都内観光のガイドを務める。
こうした動きとは別に、参加する楽しみに目的を絞った検定もある。年2回開催される神奈川県小田原市の「小田原まちあるき検定」は、毎回50人程度が受検。朝から町を歩いて、昼に名物を食べ、午前中に学んだことを簡単に試験して、おみやげを持って帰る。合否はない。
◇
ご当地検定に限らず、地域活性化のアイデアには各地が悩み続けている。つい飛びついてしまうブームの移り変わりは激しい。
検定の次は「ご当地ヒーロー」。その後、滋賀県彦根市のキャラクター「ひこにゃん」などの「ゆるキャラ」が乱立した。今は「B級グルメ」がブームのまっただ中。07年に始まった「東京マラソン」の成功にあやかり、市民マラソン大会も各地で盛んだ。民間シンクタンクのブランド総合研究所(東京)の田中章雄社長は「単にブームにのるだけでは、失敗が目に見えている。ご当地検定などで地域をアピールすることを、地元のどの産業の活性化に、どう結びつけるか、という明確なシナリオが求められる」と語る。(湯地正裕)
by machien6
| 2010-10-01 00:00
| メディア取材